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西日本がん研究機構

東京都

「がん」のより良い治療法のため、臨床試験を支える

団体名・プロジェクト名

西日本がん研究機構

西日本がん研究機構の写真

活動エリア 西日本
ジャンル 医療・福祉 

主な受賞歴や実績

平成24年より、厚生労働省「がん臨床研究基盤整備事業」補助金を継続
平成24年、認定NPO法人仮認定取得

この活動について教えて下さい

私どもの活動の中心は、「がん」に対する臨床試験の実施と支援です。臨床試験とは社会的な作業で、医療関係者以外の方への情報提供が欠かせません。また、医療関係者のトレーニングも必要です。そこで、次の3つが活動の柱としています。1)「がん」に対する臨床試験の実施と支援。2)「がん」の医療と臨床試験に関する市民啓発活動。3)「がん」の臨床試験に携わる研究者の教育・トレーニング

一般への情報提供は、市民講座の形で年に数回開催しており、各回、数百人の方が受講されています。また、肺がん患者と家族のために「よくわかる肺がんQ&A(ISBN978-4-307-20335-7)」という書籍を出版しております。これは一般の書店で購入できます。医療従事者の教育として、2日間のセミナーと2泊3日の合宿形式のトレーニングを毎年実施して受講者は50名を越えました。

日本人の2人に一人は「がん」にかかります。そして「がん」は死亡原因の第1位を続けています。分子標的薬などを含む新しい薬剤の開発も進んでいますが、依然として「がん」は健康上の大きな問題です。

■臨床試験 より良い治療法の開発

現在、私たちが受けることのできる治療は、そのほとんどすべてが前の世代の人たちの行った「臨床試験」によってその効果と安全性が確認されています。それは前の世代から私たちに贈られたもので、私たちの世代もそれに何かを付け加え、より良い治療として次の世代に贈る必要があります。

新しい薬剤を開発する場合の臨床試験は「治験」と呼ばれ、その薬剤を開発した、あるいは販売を予定している企業が責任を持ち費用を負担します。しかし「がん」に対する治療は、一つの薬剤が使えるようになっても「それだけで完全」ということがないため、新しい薬剤の開発後「より良い治療法」の開発を続ける必要があります。このような臨床試験は研究者(医師)が責任・資金を負担して「研究者主導臨床試験」として行われます。試験の結果は主に英語の医学論文として発表され、実際の医療現場に大きな影響を与えます。

■なぜ研究者主導臨床試験が必要か
「がん」に対する治療法は手術、放射線と薬物療法があります。薬物療法とは抗がん剤やホルモン製剤および最近進歩の著しい分子標的薬剤などを使う治療のことです。「がん」が、発生した場所だけにとどまっている場合、手術や放射線といった「局所療法」が大きな効果を発揮します。一方、他の臓器に転移している、あるいはその可能性がある場合、薬物療法の役割が大きくなります。これらの治療法は、多くの場合組み合わせて行われます。

つまり「がん」の場合、新しい薬剤が使えるようになるだけでは治療成績の十分な改善にはつながりません。既に使われている薬剤との併用、放射線との併用あるいは手術との併用など、「より良い治療法」を開発する上で確認しなければならない課題は数多くあります。このような併用療法に関する臨床試験が治験として行われることはほとんどありませんが、医療上重要な課題ですので研究者・医師は自ら臨床試験を実施する必要に迫られます。

■西日本がん研究機構(West Japan Oncology Group : WJOG)
臨床試験には多くの患者さんに参加していただく必要があるため、一つの病院だけでの臨床試験は困難なことが多く、たくさんの病院が共同で試験を実施する必要があります。そのためには臨床試験を運営するための独立した組織が必要です。また、その運営組織は企業や個々の研究者の利害から独立して運営される必要があります。WJOGはそのような臨床試験運営組織です。

WJOGは1991年の設立時は肺がんを対象とした組織でしたが、2007年に消化器がん、次いで乳がんに対象を広げ、名称を西日本がん研究機構(WEST Japan Oncology Group:WJOG)として活動しています。設立後2000年にNPO法人の認証、2012年には認定NPO法人の仮認定を受けました。また、2012年より厚生労働省の「がん臨床研究基盤整備事業」の補助を受け、現在30余りの臨床試験を運営しています。これまでに終了した臨床試験の結果は、国内外の学会で発表され、さらに論文は世界的にみて一流とされる医学雑誌に掲載されました。発表の多くが「がん治療ガイドライン」の根拠論文として引用されるなど、実際の医療に役立っています。

研究者主導臨床試験といえども必要資金は決して少ないものではなく、研究者・医師ならびに医療関係者がボランティア作業をする場合でも一つの臨床試験を計画し、データを集めて整理し、データベースを構築し、統計解析を行い、発表するまでの過程には多額の費用を要します。WJOGは会員の会費や寄附、厚生労働省からの事業補助金を重要な資金源としていますが、製薬企業からの資金援助も多額であるのが実情です。しかし、WJOGは製薬企業の意図によって臨床試験を企画運営するわけではありません。医療の発展・改善のために必要な臨床試験がWJOGのテーマです。製薬企業の利害にかかわらず、重要な医学的課題を解決するべく活動を続けています。

臨床試験は社会が次の世代に成果を贈る作業です。私たちそれぞれが何らかの形でかかわることが重要なメッセージとなります。次の世代に「より良いがんの治療法」を贈るため、皆様の資金援助を心からお願いいたします。

より良いがんの治療を、あなたの力で。
WJOG役員一同

どうしてこの活動をはじめたんですか?

(設立趣意書より)
本邦における死亡原因の第1位はがんであり、その中でも肺がんによる死亡が1998年に胃がんを抜いて首位となりました。したがって、この肺がんをはじめとする胸部腫瘍の治療法を改善することは本邦においての医療上の重要な課題であるのみならず、さらには保健衛生上の点から見て大きな社会的問題でもあります。

すでに、各種がんに対する基礎的、臨床的研究は各大学、病院などにおいても個別に検討され、その成果が蓄積されつつあることは周知でありますが、治療法の進歩のためには最終的に臨床の場における大規模な臨床試験が必須であり、このような大規模臨床試験を遂行するためには多くの施設が協力して多施設共同臨床試験を行う必要があります。

このような多施設共同臨床試験においてその試験の精度を高く保ち、立案から試験の施行、発表までを速やかに行い、その成果を有効に社会に還元するためには、参加施設以外に臨床試験をコントロールし、各種業務を支援する組織が必要です。すでに本邦においては肺がん分野におけるこのような研究支援組織として、日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)および西日本肺癌治療共同研究グループ(WJTOG)が活動しており、国際的にも高い評価を得ています。しかし、JCOGは年度ごとに存続の可否を申請しつづけねばならない厚生省班研究組織を母体とし、またWJTOGは任意団体であるために、共にその基盤が安定したものとは言えず、医学的、倫理的、社会的制約以外の影響が、結果を社会に還元すべき臨床試験遂行に大きな制約をもたらしていました。

このような背景に鑑み、臨床研究を支援する組織を法的な設立根拠を有する非営利団体として設立することは医療的観点からも、社会的観点からもきわめて有意義なことであると考えました。また、その団体は各大学、病院に対して臨床研究への参加要請、医療従事者の派遣要請を行い、企業、団体、個人よりの寄付行為を受け得るために法人格を有する必要があります。

そこで、われわれ有志は任意団体西日本肺癌治療共同研究グループを発展的解消し、新たに西日本胸部腫瘍臨床研究機構を特定非営利活動法人として設立し、主として肺がんの臨床試験を支援し、合わせて国内外の情報を収集、広報して、一般に対する肺がんの知識啓発に努めることとしました。この法人の活動は肺がんをはじめとする胸部腫瘍に苦しむ人々、それらの人々と共に戦う医療従事者達を支援するのみならず、健康と疾病・医療についての知識を広く一般に周知せしめることにより、広く公益に寄与すると信じています。

その後、活動を続ける途上で、肺癌だけを対象としていては不十分で偏った活動になるという考えに至り、消化器がんと乳がんのグループを設置して、名称を「西日本がん研究機構」と定めました。

この活動の遣り甲斐や喜びはどんなときに感じますか

臨床試験は通常5年以上、時に10年の期間を費やして完了します。解析結果が出て、学会での発表後、論文が有名な学術誌に受け入れられる、さらに各種のガイドラインに採用された時に一つの区切りを迎えますが、既に次の臨床試験が実施中あるいは発表準備中です。達成感は区切りごとにありますし喜びもありますが、次の作業に追われているのが実情です。

今後の夢と目標を教えてください

先に書きましたように、臨床試験は数年以上にわたる事業ですので持続することが大変重要です。そのためには十分な資金準備が必要ですが、とても十分とは言えません。一つの臨床試験で数千万円以上の費用が掛かります。どのようにして活動資金を確保するかが課題ですし、その解決が夢であります。(夢のない夢ですね・・・)

この活動に参加してみたいと思う人にひと言

少々特殊な業務ですので、作業に加わっていただくのはハードルが高いと思います。臨床試験とは何か、なぜ必要なのかについて興味を持っていただければと思います。そのために、私どものWeb siteを見ていただいたり、市民講座などに参加していただくことをお願いしたいと存じます。

取材者のコメント
古川勇樹 少々特殊な業務ですので、作業に加わっていただくのはハードルが高いと思います。臨床試験とは何か、なぜ必要なのかについて興味を持っていただければと思います。そのために、私どものWeb siteを見ていただいたり、市民講座などに参加していただくことをお願いしたいと存じます。
団体・プロジェクトの概要
代表者 理事長 中川和彦 (近畿大学医学部 腫瘍内科 教授)
住所 大阪市浪速区元町1-5-7-304
TEL/FAX TEL⇒06-6633-7400 FAX⇒06-6633-7405
URL http://www.wjog.org