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特定非営利活動法人桜onプロジェクト

東京都

想い合いの場で、みんなを元気に!

団体名・プロジェクト名

特定非営利活動法人桜onプロジェクト

特定非営利活動法人桜onプロジェクトの写真

活動エリア 宮城県、岩手県を中心とした東北地方
ジャンル その他 まちづくり 学術・文化・芸術・スポーツ 森林保全・緑化 環境全般 観光 食・産業、漁業、林業 

主な受賞歴や実績

実績
⇒2011年5月の活動開始からこれまでに東北を中心に下記の通り11件のプログラムを実施しています。
① 桜 on 気仙沼・三陸新報社プロジェクト with 西武文理大
② 桜 on 気仙沼・補陀寺プロジェクト with 日経ウーマンオンライン(協力:JTB法人東京)
③ 桜 on 牡鹿半島プロジェクト
④ 桜 on 田野畑・ハックの家プロジェクト
⑤ 桜 on 田野畑・沼袋プロジェクト(共催:盛岡地域夢起業塾)
⑥ 桜 on 寒風沢島プロジェクト with PCMU
⑦ ワタノハノ庭プロジェクト
⑧ 桜 on 牡鹿半島・十八成浜プロジェクト
⑨ 桜 on 田野畑プロジェクト with PCMU
⑩ 桜 on 釜石・唐丹本郷プロジェクト
⑪ 桜 on 田野畑・未来創造プロジェクト

受賞歴
上記のうち、③宮城県牡鹿半島でのプロジェクトを記録した映像作品が、日本財団写真・動画コンクール2012ドキュメンタリー動画部門で優秀賞を獲得しました。
http://www.nippon-foundation.or.jp/what/projects/photo_and_movie_contest/movie/winning/ 
http://sakura-on-project.jp/story/action/program/oshika-pj/ 

この活動について教えて下さい

桜onプロジェクトは、参加者みずからの「物語」を長く大切にしていくためのマイルストーンとして桜の木を植えるとともに、人々と「物語」を交感し、想い合う場を創り、 長く続く関係を築くことが出来るプログラムを提案しています。
「物語」というのは、ウェブサイトの「メッセージ」(http://sakura-on-project.jp/story/message/)で代表の田中孝幸が申し上げているように、なにか特別な出来事や歴史的なイベントを指すのではなく、私たちが日常を普通に生きている中で当たり前のようにあるひとコマひとコマのことです。言い換えれば私たちは、私たちが生きる人生のひとつひとつのピース、パーツ、つまり一見瑣末だったり些細だったりするように思えるモノゴトを含めてすべて、私たちにとっては大切で愛すべき「物語」だと考えています。日常の忙しさにかまけていても、折に触れてそうしたことのいとおしさや大切さにあらためて想いを馳せる、そして隣の人(それは家族かもしれませんし、友人かもしれません。あるいは近所の人かもしれないし、1000キロ離れた山奥に暮らすおばあさんかもしれません)とそのことへの想いを共感すること。それは日本という国で今という時代を生きる私たちが私たちの生活を少し豊かに感じられるいとなみじゃないかと私たちは考えています。これはこのプロジェクトに関わるか関わらないかを問わず、ひとしく私たち人間が大切にしていきたい価値だろうと思います。
ではなぜ桜なのか。そしてなぜそれを植えるのか。ふたつ理由があります。ひとつは桜の持つ季節性です。一年に一回必ず花を咲かせますが、そのことは特に日本では特別のこととして扱われます。たとえばスミレの花の開花予想というのはNHKのニュースでは流れませんが、「桜前線」は当たり前のように全国ネットで放送されます。ことほどさように桜は一年に一度、私たちになにかをリマインドしてくれる、そんな「機能」をはからずも持っています。それは昔桜の木の下で遊んだたわいのない幼い日の思い出の「物語」かもしれないし、来週の土曜日に桜の咲くお堀端で数年ぶりに親友に会うという「物語」かもしれませんが、桜はその「物語」が呼び起こされるスイッチの役割を果たしていると私たちは考えています。
もうひとつの理由は、桜という樹木が育っていく長い時間です。私たちのプログラムでは小さな苗木を植樹しますが、それはやがて成長して大木になり、樹種と生育環境によっては数百年以上生き続けます。例えば2015年の今年、私とあなたがお互いの「物語」を語り合いながら植えた小さな苗木は30年後に大木になります。その下で私たちの子どもが大人になって自分達の親が植えた木の話をしながら花見をしているかもしれません。あるいは300年後に私たちの子孫が、木を植えた先祖の話を頼りに数百キロ離れた街から訪ね歩いてくるかもしれません。これは後で詳しく説明しますが、その土地の人と関わり合いながら木を植え育てていくというのが大事です。なぜならば、300年後にそうして訪れた私の子孫が、300年前に私と一緒に木を植えた土地の人の子孫と、その木の下で再会するかもしれないからです。私だけが木を植えたらこの「再会」の可能性はゼロです。みずからの「物語」を大切にし、隣の人と語り合いながら木を植える。それは桜というある意味で特別な機能をもった樹木の長い年月を掛けた成長とともに未来に向かって届けることができる。たとえ遠く離れていても「隣の人」の「物語」を想い合うことができる「空間を超えた想像力」と、桜の数百年をかけた成長が私たちにもたらす「時間を超えた想像力」。このふたつの想像力を現実のものに落とし込むことが出来たら、私たちの世界は少しずつかもしれないけれど豊かになるんじゃないだろうかと信じています。
具体的にはこのアプローチを、震災によって被害を受けたコミュニティや、震災がなかったとしてもかねてからや人口流出や産業疲弊に悩んでいた村落において試みています。その土地に暮らす人びとと、我々のような外側から来た人間とが、お互いの「物語」を語り合いながら桜の苗木を植えるところから始め、木が植わった土地のことを一緒に考え、未来に向かって共に生きていこうとする土台をつくろうとしています。今年から岩手県の田野畑村という、震災で大きな被害を受けまたその前から過疎と産業疲弊に悩んできた小さな村とそこに生きる人びとと共に未来を創る仕事を始めています。
尚、これらの仕事はすべてデジタルアーカイブスと呼んでいますが、テキストと写真、そして一部動画のデータとして記録・保存されていきます。数百年後の未来にいまここにいる私たちは皆死に絶え、ひょっとすると大木の桜も枯れてしまうかもしれませんが、その時代に生きる人たちが今この時代に生きている私たちの物語を確実に受け継ぐことが出来るようにするための仕組みです。

どうしてこの活動をはじめたんですか?

花屋を生業とする代表田中孝幸と開発途上国研究機関のマネジメントを生業とする吉田暢が、とある西麻布の飲み屋で焼酎を飲みながらモツ鍋を食べていました。ふたりともその一月前に起こった東日本大震災の被害に心を痛めていましたし、他の多くの方々がそうであったように、自分達の生き方そのものを大きく問われるような出来事をどう自分の中で収まりをつけたらいいのか、折り合いをつけていったらいいのか、そんな話をしていたと思います。お金や物資を送ることも大事な支援の形だ。震災直後に厳しい環境の中に飛び込んでいった志のある人たちの勇気ある行動は素晴らしいと心から思う。他方で、震災の影響は短期に留まらず、長く後に残り続けるものだと思います。そこで「一過性の物質的な支援ではない、長く続く応援のような、そんなことができないだろうか。花屋である自分はいったいなにができるだろうか。それをこの一ヶ月ずっと考えていたんですよ。」と田中が言いました。被害に遭った人たちはなにを失ったのだろうか。家屋敷から車、家電に至るまで財産と言える財産はすべて流された。家族を失い、友人を失くした人もいます。たくさんの命が失われた。自分自身は被害が少なかった人も、周囲の人が喪失に悼む姿をたくさんみて傷ついてきたと思います。もちろん物質的な喪失は計り知れないほど大きい。でも私たちは、そこにあった関係性、つまり日常の人と人との間に当たり前のようにあったことがすべて壊されて流されてしまったと感じたのです。それらはすべてこのプロジェクトが大切にしたいと考えている「物語」です。人と人との関係性、つまり無数の「物語」が壊されて、流されてしまった。であるならば、新しい「物語」、それも彼らと彼らのことを応援したいと思っている外側の人間たちとの間で紡がれていく新しい物語をたくさん創ることで、その喪失を乗り越えていかれないだろうか。そう考えたのがこのプロジェクトがコンセプトにしている「物語」を大切にするということの原点です。そしてそれは言うまでもなく、彼らが被災者だから、ではなくて、そのずっと手前にあるべき、人と人との関係として当然あるべき関わり方なんじゃないだろうか、と考えるようになりました。つまり私たちは、彼らが被災をした人でなければ、関わり合いを持とうとしないのか、といえばそうではない、きっかけはそこにあったかもしれないけれど、そういうことがなかったとしても出会えてよかった、人としてお付き合いしていきたい、そう思える関係性を創れたらお互いに幸せじゃないか、ということです。
新しい「物語」を創って、それを新たに紡がれる関係性の上でしかも長く続いていくようにするためにはどうしたらいいか。植物を扱うことを生業とする田中は考えました。長い時間を生きるもの、たとえばひとりの人間よりもずっと長く生きて世代を超えて物語を託して伝えられるもの、現在を生きる私たちと共に成長していくもの。そう、樹木をプロジェクトのシンボルに出来ないだろうか。樹木は数多くあるけれど、それは折に触れて忘れかけていた大切な物語を思い出させてくれるリマインダーのような効果を持つ桜が良い。こうして「物語」と樹木である「桜」がつながり、桜onプロジェクトは生まれました。
震災から二月後の6月から田中と吉田は東北のあちこちを歩きはじめました。そこで様々な人たちと出会い、今に至る関係性を築いてきました。またその過程でプロジェクトに参加して中核を担ってくれる仲間が増えました。
開発途上国研究に関わる吉田は、かねてから先進国日本にありながら疲弊する地方の村落と近代化という意味での開発がなかなか進まない途上国の村落とが重なって見えていました。もちろんそれぞれに事情も、抱える表象的な課題も異なりますから「同じである」とは言いませんが、共通することもたくさんあります。そこで大切にしなければならないのは、もし望むのであればその土地に暮らす人びとが自立して、その土地に暮らすことに尊厳と楽しみを持って生きていかれることだと考えています。桜をツールとして、ひとりひとりの「物語」を大切にしようとするプロジェクトは、土地とそこに暮らす人びとに出会う過程で、その土地にある物語、人びとが長年抱えてきた物語をたくさん聴いてきました。そこには誤解を恐れずに言えば土地の人たちが自分には当たり前すぎて気が付いていない過疎の村の豊かな自然財産や、時に「田舎」であることを卑下して自嘲してしまう空気がありました。外から来た人びとと、ツールである桜を介してお互いの物語を語り合う中で、土地に暮らす人々がその土地の物語の価値にあらためて気が付く、そこで生きる楽しみを再発見する。そして外から訪ねてきた人たちと一緒に楽しみを分け合う。長い時間が掛かりますが、その土地とそこに暮らす人びとが元気になる。望めば誰もがこれからもここで生きていきたいと思えるような風景を創る。順番を逆にしてはいけないのは、その結果として地域経済は少しずつでも息を吹き返すのではないでしょうかじゃないか。そんなことに私たちの仕事は活きるのではないでしょうか・・。桜onプロジェクトが現在進めている事業の成り立ちは、そんなところから生まれてきました。

この活動の遣り甲斐や喜びはどんなときに感じますか

私たちのプロジェクトは、復興支援、被災地支援といってモノやお金をどこからか持ってくることはしませんし、コンサルタントのように地場産業のビジネスモデルについて助言したりもしません。植物としての桜をツールに物語を共感しあい未来に届ける、というのは、どちらかといえば文学的というか一見するとナイーブで非生産的なものに映るかもしれません。モノやお金は大事ですし、マーケットを正しく捉えたビジネスモデルの構築やその運用も最近はやりの「地方創生」のためにはきっと必要なこともあると思います。では私たちのプロジェクトはナイーブで非生産的にしか土地とそこに暮らす人びとと関わっていないかといえば全く逆です。知らないもの同士から縁あって出会い、お互いに大切な物語を語り合い、共に小さな木を植えて、それから遠い未来まで一緒にそれを見守っていこうと約束した関係性は、お分かりいただけると思いますが非常に重いものです。世の中では簡単に「絆」だとか「つながり」だとか言いますが、人と人との関係性というのは実はそんなに易しいものじゃないと思います。つながりが逆に人を傷つけることもあるし、つながったことでそのつもりはなかったとしても人や地域を壊してしまうことだってあります。これはなにも特別なことじゃなくて、私たちの身の回りにいくらでも転がっていることです。本当の関係性というのは生半可なものではない。なにより土の上に木が植わり、生え育っていく。その事実は消えません。例え私たち人間が責任を放棄したとしても、です。
私たちのプロジェクトは、モノやお金を運んできません。あるいはなにがしかの対価を人と人との間に挟んだ関係の作りかたをしませんでしたし、これからもするつもりはありません。なにかをまとったり、隠れたりしないから私という人間個人そのものが厳しく見られる。ことわざに「腹を割って話をする」といういささかデンジャラスな表現がありますが、他者との関係性というのは本来そのくらい真摯な態度で築かれなくてはいけないと思っています。自分の大切な「物語」を相手に語る、お互いに物語を交感するというのはそういう意味です。だからより一層厳しい。ただそうしたところからやがて私のことを面白いと思ってもらえる、同時に私がある土地やそこに暮らす人びとの物語を心底好きになる、そういう関係性が桜の苗木と共に伸びていったその先に、はじめて「なにか一緒に楽しいことをやってみようか」という未来に向かう仕事の形が見えてくる。もしやりがいや喜びはなにかという質問に答えるとすれば、そのプロセスを楽しめるということです。

今後の夢と目標を教えてください

法人としての究極の目標は、上記に申し上げた仕事を確実に自分たちがいなくなった後の世界にも続くようにつなげていくことです。ひとつひとつの事業が成功して積み重なっていくというのは、その継続のためにほかなりません。そして当然のことですがその過程において、関わる全ての人が、関わる前よりも自分の人生が豊かになった、あるいは土地に生きる楽しみが増えたと実感でき、それを周りの人たちと共感し合えることが何よりも大切です。そういう手段で人が元気になり、社会が明るくなるということがあってもいいのではないかというのが、私たちが日頃提案していることです。

この活動に参加してみたいと思う人にひと言

こういう人はこういう関わり方、という決まりきったフォーマットは設けていません。お問い合わせ頂ければ、おひとりおひとりの物語に合わせてどのように関わっていただけるのか、私たちが一緒に考えます。以下簡単に例をお示ししますと、実際に自分の身体を動かして関わってみたい、という方は正会員として事業に関わっていただけるかもしれませんし、諸般の制約があって物理的には関われないけれどなにがしかのサポートをご検討いただける方には、賛助会員の制度をご用意しています。また自分が暮らす土地、あるいは出身地で桜onプロジェクトをやってみたいという方、あるいは「セッション」と呼んでいますが、超完全参加型の物語交感ワークショップに参加してみたい、企業などで研修として実施してみたいという方もぜひ一度お問い合わせください。一部上場企業(労働組合)、地域金融機関顧客対象研修などで高い評価を頂いている実績があります。詳しくはウェブサイトをご覧ください。
http://sakura-on-project.jp/story/group/join/ 

取材者のコメント
古川勇樹 人と人との関わり合いは、とても大事で難しい。つらいことや悲しいことがあった時、それを誰かに打ち明けただけで気持ちが楽になるという経験をしたことがある人は多いだろう。そういう意味では人と人とが関わり合うことはとても大切だ。しかし一方でいじめや相互不信など人間関係に悩むこともある。人間が心から「つながる」ということはそれほど簡単なことではない。だからこそそうした難しさを乗り越えて自らの大切にする「物語」を語り合い、お互いに心を握り合える関係性が創れるかどうかが、社会のあらゆる場面で有効になってくる。
桜onプロジェクトは、その自らの大切な「物語」に気が付き、語り合える想い合いの場を創り、それが次の世代にも受け継がれていくことを通じて人が元気になり、結果として地域が豊かになることを目的として活動している。今後この事業がより広がり、多くの人びと、それぞれの地域が元気になることを願っている。
団体・プロジェクトの概要
代表者 田中 孝幸
住所 東京都目黒区2丁目11-3 HUB Tokyo
TEL/FAX
お問い合せ info@sakura-on-project.jp/
URL http://sakura-on-project.jp/